こんにちは、Yutoです。
日本で数少ないナローゲージの鉄道の写真を撮ってきました。昔ながらの無人駅で電車が来た瞬間ですね。素朴な色合いは長年使われてきたのかなという想像ができて良いですね。
とはいえその時に感じたレトロな雰囲気をそのまま写真として切り取るのは無機質な印象となってしまい案外難しいです。我々の頭は実際に見たものをベースとして脳内で雰囲気をなんとなく作れてしまうという優秀な想像力があります。だから実際に見た時の感覚と写真で見た時の感覚に違和感を覚えることがあります。
そこで今回はLightroom Classicで実際に見た時に想像したことを再現することでレトロな雰囲気を写真に持たせていきます。
現像の意図
レトロな雰囲気を出すために階調や色合いを淡くしていきます。具体的にどのようなことをするとレトロになるのか箇条書きでまとめてみました。
・黄色っぽくする
・彩度を落とす
・明るめにする
・少し白飛びしているぐらいにする
・ノイズを加える
現代のデジタルカメラで撮っただけだと、クリアな描写で現実味が強くなるため、現像でこれらの要素を再現していき、デジタルカメラならではのはっきりした描写とレトロさのおいしいとこどりをしていきます。
撮影メモ
Nikon D750 + AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR(29mm相当)1/640秒 F5.6 ISO感度 200
雨で薄暗い中での撮影でしたが、電車の動きをしっかり止めたいためシャッタースピードを早くしています。やや暗めの写真ですが、明るくできるだけのデータ量は十分といえます。
STEP1 基本補正 全体の色と明るさを整える
全体の色味、階調、ディテールと鮮やかさを調整します。満遍なくディテールが出るように階調を整え、全体の色が若干黄緑色にかぶるようにします。さらにディテールを強調しつつコントラストを淡くしていきます。
WB(ホワイトバランス)では色温度を黄色に寄せて色かぶり補正を緑色に寄せることで全体を黄緑色に被せます。
階調は露光量を大きく上げて全体を明るくしつつ極端な白飛びを防ぐためにハイライトを下げます。さらに手前の椅子がかなり暗いのでシャドウを持ち上げて明るくすることで全体を満遍なく見せることができます。
さらに、コントラストと白レベルを上げて明るいところをより白色に近づけ、陰は暗く引き締めてメリハリを出します。
外観はかすみ除去と自然な彩度を下げることで全体の階調と色味が淡くなり、レトロさを出せます。
ただ淡くするだけでは眠たい印象になるだけなので、明瞭度を上げて電車など被写体のディテールははっきり出します。
ずいぶん暗かった写真のディテールをしっかり出すことができました。
STEP2 高度な補正 レトロな色合いと階調にしていく
トーンカーブとカラーグレーディングを使って、陰を引き締めてあえて色被りをさせることでレトロな雰囲気を表現していきます。
トーンカーブで陰を引き締めます。左端を持ち上げることで黒色が灰色になって完全な黒潰れを防ぐことができます。
カラーグレーディングでハイライトに暖色を載せ、シャドウに寒色を載せて、色に対比をつけます。
全体の色を変えたことによりイメージが大きく変わりました。陰に青みがかったことで明るいところとの対比ができたとともに、写るんですのような陰のようになりレトロさが表現できました。
STEP3 電車を明るくして目立たせる
全体の色味と階調を整えたら部分補正に入っていきます。この写真の主題である電車を引き立てる補正を行なっていきます。
電車と空と森の一部を明るくします。円形グラデーションで明るい部分をざっくり囲みます。
露光量とハイライトとシャドウを上げて空と電車の天井あたりが白飛びするぐらいの明るさにします。そこからコントラストと明瞭度を下げてふわっとした印象を持たせます。
表現する階調幅を狭くすることで古いカメラで撮ったような階調表現ができます。
電車をメインに明るく淡い階調になりました。駅舎の陰の部分はマスクがかっているものの効果は弱いのでそれほど明るくなっていません。
STEP4 周辺露光落ちをさせてメイン被写体に視線誘導
メインの被写体の周りを暗くすることで、主題をさらに引き立たせるとともにレトロさをより強く出していきます。
マスク1を反転して複製をすることで、まったく反対のエリアをマスクしたものができます。こうすることでマスク1とも馴染ませやすいマスク範囲となります。
露光量を下げることで周辺露光落ちのような効果を得ることができます。機能としてある周辺露光落ちと違い暗くする場所を自分で選択することができます。
黒潰れさせてしまわないように気をつけながら暗くします。
駅舎を暗くしたことで相対的に電車が明るくなり、主題としての視線誘導が行いやすくなります。
STEP5 粒子を加えてレトロさを出す
粒子を加えてノイジーにすると一気にレトロな雰囲気が強くなります。デジタルカメラのクリア感を抜くためには必須の工程ですね。
最後に粒子を加えてノイズを乗せて若干ディテールを崩すことでレトロさを出します。
粒子の適用量を増やすほど被写体の輪郭が粗くなりますが、明らかに輪郭が崩れたようにしないことがポイントです。
粒子が出たことによりレトロな雰囲気がぐっと出ました。
まとめ
今回のポイントは
・黄緑色っぽい色被りを載せる
・円形グラデーションを使って周辺露光落ちさせる
・粒子を載せてレトロさを出す
これらの要素を加えてレトロな雰囲気を出しました。
レトロそうな被写体を撮った時は、ぜひ参考にしてみてください。
最後に、2022年10月末に「バズる!写真編集術」という本を出版することとなりました。
Lightroom Classicを扱った現像テクニック本で、SNSに写真をアップロードすることを目的とした写真の仕上がりをテーマにしています。現像の工程だけではなく考え方も記載しており、写真の仕上げ方の本質的な部分にも触れています。
ネットでも書店でも、興味のある方はぜひ一度手にとっていただければ幸いです。
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