金環日食の撮り方 初心者でも撮れる 準備するものと撮影方法をまとめました

こんにちは、Yutoです。

2020年6月21日に台湾で金環日食が観測可能とのことなので、金環日食の撮影方法を書いておこうと思います。

この記事のざっくりした内容

テーマ「初心者でも金環日食が撮れる」

  • 撮影に必要なものとオススメ機材
  • 撮影する前にオススメな事前練習
  • 撮影方法、撮影中の様子
金環日食 2012/5/21
シャッタースピード: 1/4000 絞り: 20 ISO感度: 200 焦点距離: 750mm相当(トリミング有り)
Nikon D7000 + SIGMA APO 150-500mm F5-6.3 DG OS HSM NDフィルターなし

この写真は2012年5月21日で日本で観測できた金環日食を撮影したものです。
この時はカメラをはじめて日が浅かったので、なんとか撮影できたものの反省点はかなり多く、それから8年経った今の経験則に基づいて撮り方や前準備をお伝えします。

created by Rinker
玄光社
¥2,420 (2024/04/25 22:17:49時点 Amazon調べ-詳細)

あわせて読みたい
エヌピクチャーズ 写真編集術 現像とレタッチ。めっちゃ丁寧に教えます。目指せ!脱・初心者写真。
▼この先、記事が続きます。
目次

忙しい人向け金環日食撮影 箇条書きまとめ

この記事は長く、小難しいことも書いてあるので、先に理想の金環日食撮影のまとめを箇条書きに記しておきます。

撮影機材

  • カメラ(APS-C)レンズ交換式一眼レフまたはミラーレス一眼
  • 500mm レンズ
  • テレコンバータ
  • 角形NDフィルター10000
  • 一脚

撮影設定

  • マニュアルモード
  • シャッタースピード(SS):1/2000
  • 絞り(F):8
  • ISO感度:100
  • ホワイトバランス:太陽光
  • マニュアルフォーカス
  • 手ぶれ補正ON

金環日食・皆既日食
2020年から3年以内にいつ起こるかというところと観測できる主な場所をまとめました。

  • 2020/6/21 金環日食 台湾(嘉義)
  • 2020/12/15 皆既日食 南太平洋・南米・南大西洋
  • 2023/4/20 金環皆既日食 南インド洋・東南アジア
  • 2023/10/15 金環日食 北米・南米

日本で金環日食や皆既日食が観測できるのは次の通りです。

  • 2030/6/1 金環日食 日本(北海道)
  • 2035/9/2 皆既日食 日本列島中央部

機材に関して

撮影に必要なもの

  • 手ぶれ補正つきのカメラまたはレンズ
  • 望遠レンズ
  • NDフィルター
金環日食 2012/5/21
シャッタースピード: 1/4000 絞り: 20 ISO感度: 200 焦点距離: 750mm相当
Nikon D7000 + SIGMA APO 150-500mm F5-6.3 DG OS HSM NDフィルターなし

太陽は遠いので750mm相当になる超望遠レンズを用いて撮影しても、このぐらいの大きさでしか写りません。APC-Sのカメラだと500mmのレンズで撮影しています。
ND100000を持っていましたが、濃すぎるものを持っていくと金環日食中に暗すぎて撮れなくなってしまう可能性があるので、撮影目的であればND10000ぐらいで良いと考えられます。

どのくらいの大きさで太陽が写るか

太陽がどのくらいの大きさで写るかということは実は公式があります。
その公式とは…

レンズの焦点距離 ÷ 100 = 撮像素子(イメージセンサー・フィルム)に太陽が写るサイズ

これを使えばどのくらいの大きさで太陽が写るのかわかります。

APS-Cのほうが大きく写る

フルサイズとAPS-Cで撮った時にどれくらいの比率で写るのか図にしてみました。
簡単に言えば『どちらも2400万画素のカメラで焦点距離500mmで撮影した時はAPS-Cのほうが大きく写ります
ちょっとややこしい話ですが、基礎知識として入れておくと勘違いすることが減ります。

実際に使った機材とオススメ機材を紹介

カメラ

本格的な撮影を楽しむのであればセンサーサイズが「APS-C」「フルサイズ」のレンズ交換式のカメラであることが望ましいでしょう。
もちろんレンズ交換ができないコンデジでも撮影は可能です。

  • レンズ交換式のカメラ
  • センサーサイズがAPS-C・フルサイズ

撮影当時はNikon D7000を使っていましたが、2020年時点での現行モデルはD7500です。
APC-Sカメラです。

レンズ

金環日食を大画面で楽しみたい場合は

  • APS-C:300mm〜500mm
  • フルサイズ:500mm〜700mm

ぐらいの焦点距離が最適でしょう。

「SIGMA APO 150-500mm F5-6.3 DG OS HSM」の新しいモデルは150-600mmになっています。
より望遠向きのレンズになりました。またこの焦点距離まで伸びるレンズとしては比較的安価なレンズです。
さらにここでオススメしているのは焦点距離をさらに1.4倍にできるテレコンバーターを取り付けてセットにすることで600mmを840mmまで伸ばすことができます。

NDフィルター

NDフィルターのレベルは以下の2つがオススメです。

  • ND10000(ND4.0とも表記されている)
  • ND100000(ND5.0とも表記されている)

NDフィルターを探す時はND10000やND100000と検索されるのが良いでしょう。
日食撮影に関してはND4.0やND5.0という表記もありますが、これは0の数と考えたら良いです。くれぐれもND4と勘違いされぬよう気をつけましょう。
ND100000は撮影時に暗すぎる状態になる可能性があるため、ある程度のシャッタースピードが必要となる望遠で撮影される場合はND10000をオススメしています。

大きい口径に対応するNDフィルターは少なく、角形フィルターを購入し手持ちでフィルターがけをするのが良いでしょう。長時間露光をするためではないので手持ちでも十分対応可能です。
後述しますが、NDフィルターが不要になる可能性があるため、手持ちであればその対応を素早く行うことができます。

一脚

三脚の場合は太陽に対してレンズが向けやすいものにしてください。
意外と上を向けるのが難しいものもあります。
三脚より構図の自由を効かせやすい一脚がオススメです。

自由雲台があれば上を向けやすいです。

三脚を使用される場合は耐荷重を見て決めてください。
ある程度の高さがあるもののほうが使い心地が良いです。自分の目線ほどの高さまで伸ばせるものが使いやすいです。
また3WAY雲台は上向けの構図が難しいため、自由雲台がついているものをオススメします。
一脚の場合は手持ちのサポートとして使うため耐荷重が機材よりやや下回っていても使うことは可能です。

  • 耐荷重 ≧ カメラ + レンズ の重量
  • 目線ほどの高さまで伸ばせる
  • 自由雲台が使える

この3つのポイントを選ぶのが良いです。

撮影前に事前練習をしておく

金環日食を撮影する時は以下の2つが使えたら完璧です。

  • マニュアルフォーカス(MF)を使う練習
  • Mモードで設定する練習

マニュアルフォーカスでピントを合わせられるようにする

被写体に対してマニュアルフォーカスでピントを合わせられるようにしましょう。
練習は太陽じゃなくて照明や、信号機などで行うと良いでしょう。*1 *2
マニュアルフォーカスでピントを合わせる時のコツは以下にまとめました。

  • ファインダーではなく背面ディスプレイで合わせる
  • 画面の拡大をして行う(ほぼ最大近くまで拡大する)
  • 単純に無限遠に合わせただけでは実際にピントが合っていないことが多い
  • ピントリングは最も境界線がはっきりした場所に合わせる

*1 太陽にカメラを向け続けていると撮像素子が焼けるなど機材の故障やトラブルにつながる恐れがあります。
*2 ND10000以上のフィルターがあればそれを使って実際に太陽撮影を練習するのも良いです

Mモードで設定する練習

金環日食を撮影する時は短時間で明るさが変わることもあるので、撮影設定をすばやく変えられるMモードの操作になれておくと良いでしょう。具体的にできるようになっておくと良い操作をまとめました。

Mモードで操作できるようになっておくべきこと
  • シャッタースピードを変更する
  • 絞りを変更する
  • ISO感度を変更する

この3つの操作ができるようになれば、怖いものはありません。

実際の撮影方法、撮影中の様子

直前に確認しておくこと

天気予報

天気予報はしっかりチェックしておいてください。
特に3日ぐらい前からの天気予報は重要です。天気に詳しい人は気圧配置も見ておくことでより精度の高い天気を予測することができます。

金環日食が起こるエリア

金環日食が起こるエリア内でないと撮影ができないことと、エリア内でも端っこのほうだと真円にはなりません。撮影地の調査はしっかり行っておきましょう。

日食がはじまると気温が下がり雲が出てきます

NDフィルターは不要になる場合がある

日食が進み、太陽が大きく欠けてくると気温の変化により、雲が湧き出てくることが多いです。
そのため雲がフィルターとなり、NDフィルターがなくてもはっきりと太陽の輪郭を観測できるようになる可能性があります。

金環日食の写真をイメージ検索するとわかるのですが、ほとんどが雲が出ている状態での撮影となっています。そのため実際には雲のある状況で金環日食を撮影する可能性が高いでしょう。

風が強くなるので三脚固定している人は注意

気温の変化があると、わりと強い風が吹きます。
三脚を使っている人は風で倒れないように注意が必要です。
また、太陽は移動していくため三脚で固定していてもどんどん場所が変わっていきます。余裕があれば手持ちで撮影するほうが構図が合わせやすいでしょう。

金環日食は5分ほど楽しめる

太陽に月がかぶさり、金環日食となる時間は5分ほどと短いです。
また、その中でも真円になる時間はほんの数十秒だけとなります。場所によっては真円にならないので注意してください。

撮影設定

実際の撮影では
基本的に
ISO感度は100
で固定します。
ホワイトバランスは太陽光でOKです。

参考までにND10000を使った金環日食(太陽が90%以上欠けた時)の撮影設定は以下のとおり。
あくまで参考値で、太陽の欠け具合や天候により設定値は変わります。

撮影設定 ND10000を使った金環日食の場合
  • シャッタースピード: 1/2000
  • 絞り:8
  • ISO感度:100
  • ホワイトバランス:太陽光

明るさの目安

明るさの具体的な目安は太陽の輪郭がくっきりと見えることです。
太陽自体は白飛びしていても問題ありません。被写体そのものが明るすぎるためです。
また撮影する時は手ぶれに注意しましょう。超望遠で撮影しているため早いシャッタスピードであっても手ぶれする可能性があります。三脚や一脚を使って撮影すると良いでしょう。

手ぶれしないようにする

手ぶれしない目安 1/焦点距離×1.5 秒

フルサイズカメラで500mmで撮影した場合は1/750秒以上に早いシャッタースピードで撮れば良いでしょう。
また、APS-Cの500mmで撮影した場合は750mm相当となるので1/1125秒以上に早いシャッタースピードで撮影する必要があります。
この場合はいずれも設定不可能な数値のため近い数値である1/800秒や1/1000秒で撮れば良いでしょう。

絶対にやってはいけないこと

ファインダーをのぞいて太陽を直接見ることはしないでください。

望遠レンズを通した状態では、通常の太陽を見る時に比べて何百倍もの光が集められた状態となります。
あのまぶしい太陽の光が何百倍にもなっているので、覗いた瞬間に目の網膜が焼けて失明する可能性があります。
虫眼鏡で太陽熱を合わせて燃やす方法がありますよね、あれと同じことになります。

通常売られている日食用のサングラスは望遠レンズで覗くことを想定していないので、それをかけて覗いても失明します。どうしてもという場合はちゃんと望遠レンズ用のサングラスなど濃いフィルターがかかったものが必要です。

カメラ機材の故障も防ぎたいですが、自分の失明はもっと防ぎたいことです。
ファインダーを覗くことはやめておきましょう。
フィルムカメラの場合はファインダーを覗くしか構図合わせができませんが、NDフィルターをしっかり取り付けたうえで十分に注意して覗いてください。

この記事を書いた人

目次